2013年8月23日金曜日

ホワイトホース→カーマックス (ByカヤックPart1)



2013823日 ホワイトホース→カーマックス (ByカヤックPart1)


スキャングウェイからBoards of Canada を聴きながらBorder of Canadaへ。北国の透明感のある太陽光といかにもカナダという大自然に電子音がよく合う。4時間後ホワイトホースに到着。ホステルに向うが本日はベッドがいっぱいと断られてしまう。「テントサイトなら空いているから、今からホームセンターで安いテント買ってきなよ。」とスタッフにアドバイスを受ける。30分歩いてテントを買いに行くが運悪く売り切れ。時間も遅かったので他のお店も閉まっており途方に暮れてしまった。ホステルに戻り、今日はしょうがないから野宿をすると伝えると近くに住むという友人(ジャマイカ人)に電話をしてくれ、運良くその家に泊めてもらえることになった。その晩ジャマイカ人とふたりでアバターを見る。画面に対して毎回大きなリアクションをする彼を見ていて映画の見方にも育った環境なんかで違いがあるのだなーと思いながら眠りについた。

このホワイトホースに来た理由は、ユーコン川を船で下るためである。つい最近までそんな計画は立てていなかったのだが、メキシコシティで会った旅人がこれからカナダに向かい2週間かけてユーコン川をカヌーで下る計画を話してくれた。ユーコン川がカヌーイストの聖地だということは知っていたが、それは凄腕の人たちが最後にたどり着く場所だと勝手に思い込んでいた。話を聞いていて、素人でもできるのであらばと自分もいつの間にかやる気になっていた。その友人は僕がこの街につく1日前に既に川に入ったらしい。早速僕も準備に取り掛かる。レンタルカヌーショップに行くとカヌーは全て出払っておりカヤックなら貸せるという。少し割高だが待っている時間もないので僕はカヤックでユーコン川の支流テスリン川からスタートし、途中ユーコン川に合流、8日間かけてカーマックスという街まで下る計画を立てた。カヌーに比べカヤックは積載できる荷物の量がかなり限られるので悩みに悩んで8日分の食料や自分で持っていない様々な道具を買い揃える。準備だけでまる一日かかり既にクタクタになってしまった。出発前夜色々と考え出すと不安でなかなか寝付けない。一度川に入ってしまえば、ゴールの街まで人の住む街はおろか道さえも川とは接しない。何かあれば同じ様に川を下っている旅人か、上空を飛ぶ飛行機にSOSをするしかない。もちろんここは熊をはじめとした野生動物がわんさか生息するエリアだ。食料をけしてテントの近くに置かないなど注意することは山のようにある。そして全ては自己責任だ。レンタルショップはあくまでレンタルショップであって、カヤック素人の僕に手厚くレクチャーをしてくれるわけでもないし、何の保証をしてくれるわけでもない。

翌日、川岸まで車で送ってもらいいよいよカヤックの旅が始まった。パッとしない曇り空の下パドルをどう動かせば船がどう動くかを色々と実験してみる。なかなか真っ直ぐ進んではくれない。初日は30kmを漕ぎキャンプをすることにした。しかしキャンプ地に選んだ河原には無数の熊の足跡がついている。今まで見ていたブラックベアのものよりはるかに大きいこの足跡はグリズリーのものだろう。気持ちに余裕もないのでインスタントラーメンを作り19時には寝袋に入る。一晩中、外で音が鳴るたびビクッとして起きる。

2日目、朝から雨が降っている。テントをたたむのも食事を作るのもすべてが億劫だ。しかし、一向に止む気配がないのでずぶ濡れになりながら支度をし、9:00出発。前日よりも少しだけ余裕が出てきた。ハクトウワシやカワウソ、ビバーなど様々な動物が顔を出す。人工的な音が一切しない世界。一本の枝が水面に触れて立てる小さな音まで鮮明に聞こえる。結局雨は一日中降り続き、部室のような匂いのするテントの中で寝た。本日漕いだ距離40km


3日目また雨が降っている。ため息をつきながらテントをたたみ、パンとコーヒーの簡単な食事をして出発。少しパドルが軽くなった気がする。体が自然に無理のないフォームを作るのだろうか。お昼頃にやっと雨が止む。雲の切れ間から太陽が顔を出した。ほとんど合羽の役割を果たしていなかったアウターが乾いていく。これほど太陽に感謝したことはしばらくなかった。50kmを漕ぎ川の中の島でキャンプ。持ってきた水がどんどん減っていたので、川の水を沸かして飲み水を作る。雨が降っていないため焚き火を作ってガス燃料を節約。そんな作業に必死になっていると、対岸で大きな足音が聞こえた。顔を上げるとムースの親子連れがこちらの様子を伺っている。すぐに逃げるものと思っていたがこちらを伺いながらどんどん近づいてくる。ムースは大型の鹿で、近くで見るとかなりの迫力だ。10m先まで彼らが近づいて来た時、僕は写真を取ろうと立ち上がる。その瞬間彼らはあっという間に逃げていってしまった。空間と時間が一気に密度を増した瞬間だった。この島に船を着けた時やたらとムースの足跡が多いと思ったのだが、どうやらここは彼らの道だったようだ。後で辺りを散策すると一頭分のきれいな骨が転がっていた。今日はいいこと続きだ。

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