2012年11月13日 ジャイサルメール
パキスタンとの国境まで100km、砂漠の街ジャイサルメールに来た。ここでの目的は駱駝に乗って砂漠を歩き、砂漠に泊まるキャメルサファリである。
ジャイサルメールを出てすぐ辺りは荒涼とした砂漠になる。砂漠といっても一面サハラ砂漠のように砂だらけというわけではなく、ポツポツと木が生えた乾燥した大地の中に鳥取砂丘クラスの砂丘がいくつかあるといった感じである。その風景は8年前に旅したモンゴルのゴビ砂漠を思い出させた。2人のキャメルマン(駱駝使い)に3匹の駱駝で僕のキャラバンは出発した。辺りは何もない世界。もし数人で地元の話をしている中にこの砂漠出身者がいて、「地元何もないんだよね」と言われてしまえば、もう誰もそのワードは使えなくなってしまうだろう。それぐらい何もない。その中で人々は申し訳程度に積み上げられたレンガの家か、木の棒と布だけで作ったテント(というか日よけの屋根)か、もしくは木の陰に住んでいる。一見何の目印もないように見えるこの土地でも、ここに住む人たちはそれぞれの家の場所や家畜がどこにいるかも把握している。それがその土地に住むということなのだろう。2時間ほど駱駝に揺られて到着した砂丘を裸足で歩く。西の空には地平線に沈んでゆく太陽が見え、砂丘はオレンジ色に染められてく。地平線という言葉は日本ではなかなか実感がわかないが、ここでは定規で引いたような地平線を見ることができ、みるみる沈んでいく太陽を見ていると地球が回転しているのだと実感できる。
太陽が沈んでしまうとキャメルマンたちは焚き火をはじめ、まず美味しいチャイを入れてくれた。その後同じ焚き火でカレーを作り、チャパティというインドのパンも焼いてくれた。このチャパティは今までインドで食べたモノの中で一番美味しかった。しかし、カレーは尋常ではない塩辛さで、おかわりは丁寧に断った。太陽が完全に沈んでしまえば、辺りは真っ暗になり、空には満天の星空である。星空、砂漠、駱駝、焚き火、男が3人とこれば、話すことは1つしかない。そう下ネタだ。英語が苦手なのにも関わらず、下ネタだと理解できてしまうのは不思議なのだが、年配のキャメルマンがこのツアーで起きたキャメルマンと日本人女性ツーリストのアバンチュールを事細かに話してくれた。話に熱中する彼からふと自分の足元に目を移すと、なんとそこには野生の蠍がいたのだ。僕の足とは1cmしか離れていない。うわぁ!と大声を出すと、キャメルマンは瞬時に自分のスリッパを思い切り蠍に振り落とした。ビチャ!いう音と共に蠍は潰れたのだが、その液体が全て若いキャメルマンの服に飛び散った。彼も奇声を上げたのを見るとやはり蠍はローカルにとっても怖い存在のようだ。しかし年配のキャメルマンは気にせず下ネタの続きを話しだした。彼を制し、蠍はいっぱいいるのかと聞くと、「そんなにいない。火を焚いているから寄ってきたんだよ」と答え、また下ネタに戻る。今日はこの砂漠に布を直ひきし寝るのだ・・・・大丈夫なのか。そんな心配をよそに焚き火の火が消えるとキャメルマンたちは寝る用意をはじめた。まあ気にしてもしょうがないので僕も寝ることにする。
あんなにたくさんの流れ星を同時に見たのはそれこそモンゴル以来だった。寒さもあり何度か起きてしまったが、その都度目の前に広がる星空が変化していた。目の錯覚かもしれないが、辺りが明るくなるにつれ見える星は減っていき、今まで光って見えていた星のあとは黒い点になっていた。まるで空に穴が空いているようだ。それは星空より幻想的だった。
別れ際キャメルマンは、「もし君が日本に帰ってインド料理屋をやるなら俺を雇ってくれ」と言った。うーん、チャイとチャパティーは合格だが、あのカレーはアウトだ。
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