2013年9月11日水曜日

アンカレッジ→ロサンゼルス



2013911日 アンカレッジ→ロサンゼルス


迎えに来たバンには僕以外にもうひとりの客とドライバーしか乗っていない。北に行けば行くほど移動費が高くなるが、この利用者の数ではしょうがない。ハイウェイを使いアンカレッジを目指す。早朝のフェアバンクスは深い霧に包まれ、10m先が何とか見える程度。今の季節アラスカは紅葉が始まっており、霧が晴れていればおそらく素晴らしい景色が左右に広がっているはずだが、見ることは出来ない。しかし、あたり一面霧に覆われたその景色もまた素晴らしい。北に来てから何かに期待することがなくなった。そういった姿勢でいれば些細なことから、偶然出会った大きな出来事まで同じ様に感動できる。4時間走って、デナリ国立公園の入口に着く。ここで車の乗り換えと昼食のため1時間休憩。フェアバンクスで知り合ったインド人にデナリ国立公園の写真をたくさん見せてもらったが、ここはまさにイメージ通りのアラスカだった。万年雪をたたえる山々に囲まれ、紅葉した大地は黄、赤、緑と美しい迷彩模様を作り出している。グリズリーやムース、カリブーが闊歩し、人間の入り込む余地のない世界。僕が今立っているここからは見えないが、この入口から先にはそんな世界が広がっているのだ。今更ながら行けばよかったとも思うが、おそらくアラスカにはまた来ることになるだろう。アンカレッジからやってきたバンに乗り代え、夕方宿につく。

とうとうこの旅最後の街だ。そしてここが最後の宿になるのだが、着いてすぐに失敗したことに気づく。元々治安のあまりよくないエリアに建っているせいか雰囲気があまりよくない。部屋は臭い、汚い、怖い人多い、風邪の人多いの4Kで(僕の部屋だけかもしれないが)、夜中の3時に部屋の電気をつけて大声で電話をするルームメイトにはお手上げだ。着いたその日に僕も風邪をひいてしまう。頭も体もだるいので少し外を散歩するぐらいしかできず、宿で映画を見たり本を読んだりして過ごす。それでも3度の食事はしっかりキッチンで作って食べていた。キッチン横のリビングスペース(なぜかここに住んでいる人もいる)には大きなテレビが置いてあり、いつも同じ人たちが一日中テレビを見ている。食事をしながらテレビに目を移すとちょうどソフィア コッポラ監督の「ロスト イン トランスレーション」が流れていた。この映画は東京が舞台で日本語のシーンも多い。前回見た時とは字幕が付いている言語が真逆だ。この映画の中では外国人から見た日本がわかりやすく描かれている。小さくて、メガネをかけていて、みんなスーツで、英語が話せない。以前見たときは少し馬鹿にされているように感じたがこうして世界を旅した後だと、確かにこう見えるだろうなと思う。僕自身他の国では人々に共通した特徴を探し、色んな人がいるとわかっていながら、それがその国の人のイメージになる。さて約1年ぶりに帰る日本は僕の目にどう映るのだろうか?それこそこの映画のように見えるかもしれない。街のサインボード、電車のアナウンス、レストランなどは旅行者に親切なのだろうか?Free WIFIはどれぐらいあるのだろう?安宿の価格はどれぐらいなのか?今まで持ち合わせていなかった海外の旅行者視点で見慣れた景色を見るというのは興味深い。

風邪でほとんど何もしないままアンカレッジ滞在を終え、飛行機でロサンゼルスへ。今僕は空港で日本行きの飛行機を待っている。やはり同じ様に待っている人は日本人が多い。日本語に囲まれ変な気分だ。2週間前までは日本に帰り、友人に会えることや美味しいものを食べられるということが楽しみでしょうがなかった。いや今でもそう思っているのだが、帰国が迫るに連れて表現しづらい複雑な気持ちになってくる。本当に終わるのだな・・・おそらくその実感を持てないのだ。しかし、世の中の大半のことはこうして大したフィナーレがあるわけでもなく、なんとなく終わっていくものなのだろう。いつかは終わるのだ。終わって始まるのだ。さあ日本に帰ろう。

※ロスの空港には大きな銃を持った警官が歩いている。偶然今日は9月11日だった。



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