2013年9月6日 ホワイトホース→ドーソン シティ→フェアバンクス
カヤックの旅から戻り、燃え尽きたようにホワイトホースの宿でひたすらダラダラと過ごす。起きて、食べて、本を読んで、インターネットをして、釣りに出かけ、焚き火を囲み、オーロラを見る。すぐに移動する予定を延長し、3日間こんな生活を続けた。ここはそんな宿なのだ。皆長居をしてしまう。火は出会って間もない人々の心を開き、いつの間にか会話の内容は深いところまで掘り下がっている。日没が遅いせいもあるが、気がつくと日にちはとっくに変わっていて、朝がすぐそこまで来ていた。
ホワイトホースから小型のバン(信じられないほど高額)に乗り、7時間かけてドーソン シティという街へ。そこから更にバンを乗り換え鋪装されていない砂利の山道をかなりのスピードで登っていく。北に行けば行くほど、高度が上がれば上がるほど赤や黄色の木々の割合が増えていく。山頂付近にアメリカ国境があり、3度目の入国スタンプを押してもらい、アラスカに入る。見渡す限り人工物が全く見えないツンドラの大地。その中にマジックで引いたような真っ直ぐな道が永遠と続く。日本も自然に恵まれた国だが、人の手が全く入っていない景色を見るのは至難の業だ。山を見ても植林された山が多い。予定をはるかに超えホワイトホースを出発してから17時間後、日にちが変わる直前にフェアバンクスに到着する。
アラスカ大学フェアバンクス校はかなり大きな大学で、学内をバスで移動しなければならないほどだ。学内にある博物館はアラスカ全土の中でも収蔵品の量、品質ともに一番だと言われているだけあって、沢山の観光客がいた。中でも日本のツアー客が最も多かったように感じる。大学の敷地はそのまま広大な森に続き、その中には沢山のトレイルや、犬橇コース、クロスカントリースキーコースが作られている。トレイルに入り何時間もその中を歩くと動物の足跡や糞、そして何かの研究データを採集するための装置(一見ただのゴミに見えるようなものもある)を見つけることができる。ツンドラの大地は踏むとモフモフしており気持ちがいい。その森に毎日通いながら、この街でもダラダラと過ごす。
そんな中でホワイトホースにいる時から料理だけは3食しっかりと作っている。旅も終盤に差し掛かり今更?という感じだが、1年間の旅を通して日本という国が確実に世界に誇れるものは料理だなと思った。そしてアジアの食文化は世界で一番だろう。ホステルのキッチンでしっかり料理を作るのは日本人ぐらいではないだろうか。僕が会った旅人はみな現地の食材を使いとても器用に料理をする。そんな旅人たちにはかなわないが、日本人が少ないホステルで料理をしていると、ずいぶんと声をかけられるのだ。「君は料理人?」「まるでレストランね!」フェアバンクスの宿で夜親子丼を作っていると、中国人の若い4人組の女の子が話しかけてきた。「え!?ご飯を鍋で炊くの?ライスクッカー(炊飯器)ではなくて?」この宿に炊飯器はない、というより炊飯器のある宿なんてほとんどない(日本人の経営する宿ぐらい)。「ライスの歴史はライスクッカーよりずいぶん長いんだよ。」と皮肉を込めて言う。彼女たちは現在NYに留学をしており、休暇を使ってアラスカに旅に来ているらしい。きっとかなりお金持ちの家の出身なのだろう。何かするたびに素晴らしいリアクションをしてくれる。胃袋を掴めば男は逃げないのだと、昔女性の友人が言っていたが、それは逆でも言えることなのだろうか?
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