2013年5月16日 ウシュアイア→エル カラファテ
プエルト ナタレスからバスで舗装されていない荒野の道を走り、マゼラン海峡を渡って再度アルゼンチンに入国する。さらに3時間ほど走れば世界最南端の街(もう少し南のチリ領に小さな村はある)ウシュアイアに到着である。最南端という言葉から寂れた小さな街を想像していたが、プエルト ナタレスとは比較にならないほど大きな街であった。
この街には日本人の方が経営されている宿がある。街からタクシーで20分程離れた郊外にその宿はあり、一度そこまで行ってしまうと、街に出るのも一苦労である。昼頃ベッドから起き上がり、朝食兼昼食を終えれば時間は既に14時を回っている。しかもNHKの海外放送を見ることができるのでなかなか外出のタイミングをつかめない。普段日本では見ることのない連続テレビ小説やのど自慢、おかあさんといっしょ、ジャニーズJRの番組をただボーっと見続けてしまう。おまけに外は寒い(南半球はこれから冬)とこれば、尻はより重くなってしまう。夕方、尻にムチをうち近所のスーパーに向かい食材を買い込み、宿に戻って皆で夕食を作る。ワインを飲みながら夕食を食べ、しゃべっていると時刻はもう3時や4時になっているのである。このような毎日を過ごしていると、一日の目標が爪切りやひげ剃りなど極めて低いところに設定される。まあ、長い旅の中でこんな日があってもいいのだ。
もちろん、ただ宿にいただけではなく国立公園に行ったり、近所を散歩したりと少しは動いていた。ちょうど僕がいたときに今年初の積雪があり、辺りの山は綺麗に白化粧した。山も海も空気も一気に緊張感をおび、手作りの家々やボロボロの車などはより一層寂しさをまとう。ヨーロッパからずっと冬を追いかけて来ている。この空気が好きなのだ。
1週間ほどウシュアイアに滞在し、再度エル カラファテに戻ってきた。2週間ぶりに見るエル カラファテの街明かりは知っている街に帰ってきたという安堵感を与えてくれた。現在パタゴニアはオフシーズンで、バスの減便や道の閉鎖などでなかなかスムーズに旅は進まない。当初南米は6カ国程回る予定でいたが、その予定からひとつふたつと国を減らしていっている。しかし、ひとつ国を減らすたびに心に余裕が生まれ、急がなくてもいいという安堵感が今は心地いい。ここに来るまでの8ヶ月間僕は本当に急いで旅をしてきたなと思う。人には何をするにもそれぞれに合ったペースがある。それをしっかりと自分で見極めている人はなかなか少ない。これだけ長く旅をしていても僕はまだつかめきれずにいる。
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