2013年5月2日木曜日

エル カラファテ




201352日 エル カラファテ


ブエノスアイレスから国内線でパタゴニアのエルカラファテという街に移動する。パタゴニアという国は存在しない。南米大陸南緯40度以南のチリ、アルゼンチンにまたがる地域のことを指す。以前もこの日記で書いたが、この旅をはじめる前に行きたいと思っていた場所はたった4箇所しかない。ヒマラヤ、アイスランド、アラスカ(カナダ西海岸含む)、そしてパタゴニアである。移動続きで慌ただしいヨーロッパの旅の途中僕はずっとこれから向うパタゴニアのことを考えていた。ずっと憧れていた土地なのだ、慌ただしく移動することはやめ、ゆっくりとパタゴニアを周ろう。パタゴニアだけで南米を離れてもいい。

エルカラファテの空港に降り立った瞬間自分のあらゆる感覚が開いていくことがわかる。今、自分はパタゴニアに立っており、そこの空気を吸っている。旅の中で読んだ村上春樹の『雨天炎天』という本の中に下記のような一節がある

僕を惹きつけたのは、そこにあった空気の質のようなものではなかったかと思う。そこにある空気は、他のどことも違う何かしら特殊な質を含んでいるように僕には感じられたのだ。肌ざわりも、匂いも、色も、何もかもが、僕がそれまで吸ったどのような空気とも違っていたのだ。それは不思議な空気だった。
旅行というのは本質的には、空気を吸い込むことなんだと僕はその時思った。おそらく記憶は消えるだろう。絵葉書は色褪せるだろう。でも空気は残る。少なくともある種の空気は残る。

この一節の通り僕はパタゴニアの特殊な空気を感じとり、それに酔った。(村上春樹は小説よりも旅行記の方が僕は好きだ。)見えるものすべてが自分の奥の方の繊細な部分をこそぐる。特にこの土地の朝の美しさは格別である。ベッドに入ったままカーテンの隙間から朝焼けで真っ赤に染まる雲を見ていると、泣きそうになる。このエルカラファテは大きな湖の辺にある街だ。ベッドから起き上がり、湖の水面や紅葉した木々がキラキラと光るのをコーヒーを飲みながら見ている時もまた、僕は心をクシャクシャにされるような感じがする。ずるいと思う。(余談だが、どうも湖畔の街が好きなようである。中国の大理、ネパールのポカラ、滋賀県etc)

パタゴニアはアウトドアアクティビティの聖地でもある。宿で出会った友人とフィッツロイという山を見に一泊二日のトレッキングに出かけたり、氷河の崩落を見に行ったりもした。全てのスケールはこれまで自分が体験したものをはるかに凌いでいる。しかし、上記したようにこの土地に僕が惹きつけられるのはその空気であり、その空気が染み込んだ手作りの家や、野良犬、ボロボロの車、そしてここに住む人々なのだ。これから一ヶ月はこの地域を回る予定である。

※高校2年生ぶりに坊主にしました。久々に見る坊主の自分はあまりに老けていて、当時の面影は全くありませんでした。

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