ずいぶん久しぶりに一人で山に入ろうと思い立った。
前日は三時近くまで飲んでいた為、頭が少し痛む。
午前中に溜っていた家事をすべて終わらせ、地図を広げ目的地を決める。
山は雪が降っていた。ちゃんとした雪を見るのは今年初めてだ。歩き出してしばらくすると頭の痛みはすぐどこかにいってしまう。ザクザクと落ち葉を踏みしめる音、風によって木々が揺れる音、そして土の匂いが感覚を刺激し、どんどん気持ちが高揚していく。ここ何ヶ月のもやもやとした気分もどこへやら、「あぁ、山に来たかったんだな」と実感する。感動している間に目的地の池が目の前に広がった。池のほとりでバーナーで水を湧かしコーヒーを淹れる。
こんな雪が降っている日に山に来る人などいないので山の中では始終一人だった。そんな状況で怖さではなくむしろ安らぎのようなものを感じることができるのは今自分が山の中のどこを歩いているのかを把握できているからである。それは意識的に訓練したものではなく、小さい頃から山の中に一人で入っていく中で自然に身に付いたものだ。このような自然の中に身を置くことで得られる知恵や勘こそがきっと人の本当の力なのだと思う。ベテランの猟師になると木に残された爪痕から30通りの行動パターンを読み取れると聞いたことがある。また、太平洋の島々の人はGPSはもってのほか地図がない時代から星の動きを見ながら航海をし、お互いの島を行き来していた。震災のあった東北の方々があれほどまでに強いのは、厳しい自然の中でずっと暮らしてきたからだ。人が作ったシステムに寄りかからずに生きる力は自分にはまだ全然足りない。人は本当に進化しているのか。手の中の機械のおかげで何でもできると舞い上がっていては、それが無くなった時何もできなくなってしまう。わざわざ不便な生活をするのも違うと思うが、自分があくまで自然の一部であり、その中で生かされているという自覚だけはあったほうがいい。
さて、山を下りよう。
冬に合うBon iver
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