ある日、山間部の小さな集落の中にある農協の前のバス停で、バスでやってくるはずの人を待っていた。自分以外にはかなり歳を重ねているおばあちゃんがひとりバスを待ってベンチに座っている。辺りには川の音と鳥の声だけが響いている。
そこへ近所の子供6人がプールの道具を持って現れる。農協には小さな商店が併設されており子供たちはその中に入っていく。しばらくすると彼、彼女らはアイスクリームをくわえ外に出てきて農協で働いている若い男と話をしている。典型的な夏休みといった感じのその風景を見ていると自然と自分の口角が上がり、目尻にしわが寄っていることに気づく。ふと隣を見ると老人も子供たちを見て笑っている。
山の陰からバスが現れ、自分が待っていた人がゾロゾロと重い荷物を持って下りてくる。
「いってきまーす!!」農協の男に子供たちは別れを告げバスに乗り込む。遅れておばあちゃんも乗り込む。バスがゆっくりと走り去る。農協の男は仕事に戻る。
また辺りは川の音と鳥の声だけが響いている。
1日に4回しかこのバス停にはバスはこない。その度に人々は集まってきて言葉を互いに交わす。知らない場所のこの一瞬の交流に、見ていただけにせよ立ち会えたことが妙にうれしかった。
しかし、毎度のことながらなぜ自分が今ここにいるのか不思議に思う。
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