歩くことが好きである。
家から職場までは毎日歩いているし、
休日の外出時でも歩ける距離であればなるべく歩く。
一度京都から実家のある岐阜まで、3日間かけて歩いて帰る計画を
立てたが、60キロ歩いた時点で、足を痛めてしまった。
アスファルトは山のようにはいかない。
私はよく歩くのが早いと言われる。
それは自分でも自覚があったし、「特技は?」と聞かれれば
早く歩くことと答えてもいいぐらい自信がある。
しかし、最近読んだ雑誌の記事の中で、白神山地のマタギの方
の言葉でこのようなものがあった。
「ところで都会の人は非常に足が速いんですね。今日も飛行機を
降りて、空港の通路を歩いて来る時、どんどん追い越されました。
以前、東京へ行った時も駅のホームで同じことを感じましたが、
あれで田舎の人と都会の人が見分けられますね。でもこういう都会の
人たちが山へ来ると、全然歩けないんです。」
マタギといえば山歩きのプロである。私はてっきり強靭な脚力で、
ものすごいスピードで山を歩いているものだと思っていた。
しかし、予想に反して小股を意識して歩くそうである。
登山などをしていると、地図に書いてある平均の所要時間よりも
いかに自分が早く目的地まで到達できたのかを、つい意識してしまう。
もちろんマタギと登山では目的自体が違う。マタギのかたも
「山では時速より、何時間歩いたか。」
とおしゃっていた。ここでいう山は狩り場という意味だろう。
とはいえ、確かに早く歩くことで、見逃しているものが多々ある。
自動車より自転車、自転車より歩きと進むスピードが遅くなれば
遅くなるほど、私たちはたくさんの気づきを得る。
歩くスピードでも景色は変わるだろう。
もう少しゆっくり歩いてみよう。
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